「ぐ…」
目を開いたポチの前に広がるのは 青い空。
どこかの街の大通りに倒れていた。
街には明るい音楽が流れている。ポチには聞き覚えのある音楽。
「ここは…」
「あーそう。」
すぐ脇の露店に居た見覚えのある服装の人間にポチは目を奪われる。
「じゃ、また来るわ」
「おう、頑張れよ」

「ぼく…?」
また幻か、ポチはそう付け足した。
白いロングコートにサングラス。
髪も金茶色で今のポチとは大分雰囲気が違うが…
「(この髪って事は5年近く前だな…
それにこの街は……)」
過去のポチが交差点の手前まで来た時 物凄い爆音と突風が吹きぬけてきた。
もうもうと立ち込める砂煙。
ポチのサングラスは爆風で吹き飛び、器用にセットされていた髪も服も埃だらけでぐちゃぐちゃだ。
爆風により崩壊した建物、吹き飛ばされた人々。
何が起こったのか分からずにぽかんと停止してしまっている過去のポチの隣を駆け抜けていった。
向かうのは爆音の元。
(ぼくの記憶と勘が正しければ この先にミシナが………)
「ミシナ…!」


飛び散った肉塊。
大きく窪んだ地面の中央にはピンク色の髪の女。
ポチと同じく、5年前のミシナだ
そのミシナの腕には引きちぎられた子供の腕が握られている。
「…また……」
ミシナの血だらけの頬に涙が伝った。
「また…殺してしまった……
あたしは あたしは人を守りたいだけなのに…!!」
崩れ落ちた過去のミシナの後ろには 呆然と立ち尽くしているミシナの姿があった。

「ミシナ…」
全力疾走してきたポチの息は荒い。
ミシナの姿を見つけて名前を呼ぶと ミシナはびくっと肩を跳ねさせた。
「…っ…ポチ…っ?」
振り返ったミシナの目は涙で赤く腫れている。
ポチはそんなミシナの腕を引き、抱き寄せる。
「ミシナ…ごめんな 一人にさせて…」

「あーあー…事故ならよかったのに…」
そう言ったのは、後から駆けつけてきた過去のポチ。
辺りの悲惨な状況に目を覆う。
「スウィーパーの仕事かよ」
「…」
ポチの声にミシナが反応した。
血だらけの子供の頭を抱き、先ほどまで流していた涙は止まっている。
頭をその場に置いたミシナ。
懐からナイフを取り出し、ポチに飛び掛った!
「うおっ!」
ミシナはナイフを大きく振りかぶり、ポチの左肩に突き立てる。
ポチはミシナの腕を掴み、深く刺さらないように塞いでいた。
そして、ポチの左手に握られている銃はミシナの頭部を睨みつけている。

「はっ…初対面だってのに、大胆だな」
ポチは苦笑いを浮かべてナイフを握るミシナの腕を振り払い 突き刺さっていたナイフを投げ捨てた。
白いコートが真っ赤な血で染まっていく。
ミシナはその場に崩れ落ちた。
自分の髪を強く握り締め、涙をこぼすミシナを見てポチは目を見開く。
「なっ…」
「…あたしを殺して!
あんたスウィーパーなんでしょう!?殺して!!
その銃であたしを殺して!」
ミシナはポチのコートの裾を掴み、叫ぶ。
「……駆除許可の出ていない君を殺す事はできない」
「…!そんな…っ…
あたしは人を殺したのに!」
喉から絞り出すように喋るミシナの声は不安で震えている。
「どうして…どうしてなのよ……………」
「あー…もう…」
ポチはミシナの正面にしゃがむと、優しく頭を撫ぜた。
「泣かないでよ…」

あたしの力は 人を殺す事しかできない……」


「!」
気を失ったミシナをポチが支える。
「ミシナっ?」
この場所に飛ばされたときと同じように、ざあっと風景が変わった。

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