「グェント」

名前を呼ばれ、グェントはゆっくりと振り返った。
グェントの居る場所は俺やミシナたちが居る 白い 場所とは違う。
真っ暗で、それなのに自分の姿ははっきりと見えている。
「………アマネ……」
「どうして…どうして私を殺したの……?
私は生きたかった… 生きたかったのに…!」
自分が殺した母親の姿にグェントは動揺が隠せない。
アマネは涙を零し、グェントを責める。
「グェント…」
再び名前を呼ばれ、グェントは振り返った。
そこに居たのは、白い髪にピンクの着物が映える ミ・ミだ。
「どうしてあの時…守ってくれなかったの?
運命は変えられないの…?
どうしてあんな奴にあたしの魂を使ったの!?」
グェントの脚に縋り付いてくる何十体にも及ぶ腐りかかったスヴェルたち。
グェントは恐怖と後悔に顔を歪める。

崩れ落ちたグェントの目の前に、一人の男が現れた。
「父…さん……っ」






「ここは自分の罪を悔い改める為の場所だよ、ルリスちゃん。」

気味の悪い低い声に意識が引き戻される。
その途端、辺りの景色が消えた。
また真っ白に…しかし、次は一人きりではない。
「一緒に見せてもらったケド
キミも結構、辛い思いしてきたんだなァ」
にったりと微笑んだ男。
それは間違いなく、この間戦った デュルァ だった。
「俺もさ、目の前でスウィーパーにパパを殺されたんだ。
パパは俺を守ろうとしていただけなのに。」
俺の正面に屈み、頬杖をつくデュルァの表情はどこか寂しげで…
「だから スウィーパーを殺してるの?」
そう問いかけると デュルァはにっと笑った。
「………
あんたに関係ないだろ。それより
グェントを助けに行った方がいいんじゃない?」
「えっ?グェントがここに居るのか?!」
そんな俺の反応にデュルァは満面の笑みを浮かべると 立ち上がって俺を見下ろした。
「いや、ここには居ない。
コウカイの空間』だ。」
「(後悔…っ?)」
「連れて行ってやろうか?
条件付きだけど」
今気付くと デュルァには影がある。
デュルァのすぐ後ろに壁があるように、真っ黒な影。
「……条件…?」
「簡単な事だよ 命を懸けてくれればいい。何があってもグェントを守れ。
それが無理なら、ここでキミを殺して俺がグェントを貰う。」
デュルァはゆっくり瞬きをすると 立ち上がった俺の方へ歩み寄ってきた。
包帯だらけの冷たい手であごを掴まれ、全身に鳥肌が立つ。

「どうする?ルリスちゃん。
俺としては、今ここで死んでくれた方が嬉しいんだけど」
「………そんなの…グェントに拾われた日から覚悟してる」
俺を担当したのがグェントでなければ、
俺は今頃駆除されているか、長い懲役の後再教育センターで一日中監視されながら暮らしていただろう。
「そう」
デュルァは口の端をめいっぱい吊り上げ、笑った。
「それじゃあ、闇に食われないように歯食いしばれよ」
「はっ?!」
突然服の襟を掴まれ、強く引っ張られ…というか投げられた!
一気に迫ったデュルァの影。
俺は思わず腕で頭を庇ったが、痛みはない。
視界が一気に真っ暗になったかと思うと 次は浮遊感。
床がどこにあるのかも分からない。
真っ逆さまに落下したが、猫でよかった…しっかり足で着地できた。
「(ホントに真っ暗…こんな所にグェントが…?)
…!!」
突然の殺気に振り返る。
そこに居たのは……………

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