「ミシナさんは一命を取り留めましたよ。
意識もはっきりしているそうです」
「………」
顔を上げたグェントの目元は 涙で赤く腫れている。
俺は歩み寄ってくる隊長を睨んで威嚇するが、隊長は微笑むだけで一ミリも怯まない。
俺の前に立った隊長は、手に持っていた紙を俺に差し出した。
「グェント君の検査の総合結果です。ご覧下さい」
「……。」
警戒しながらそれを受け取り、中に目を通す。
…………………?
「うーん…そしてですね
私、昨日の『貴一との訓練中に左腕を負傷した』衝撃ででしょうか、
どうしてグェント君をここに閉じ込めているのか憶えていないのですよ。
何か問題ありました?貴一」
隊長は自分のこめかみに手をあて、わざとらしく笑って貴一さんに話を振る。
その話の意味を理解した貴一さんも 首を傾げて笑った。
「ああ、和乃に無断で別行動したの以外はなーんも問題あらへんかったわ」
「…何のつもりだ……」
グェントは眉を寄せ、二人に言った。
「つまり、『人間』のあなたをこれ以上ここに拘束する理由がないという事ですよ」



「……!」
「あとの2%は、過去のスヴェルの治癒術やら手術やらで後天的に混じったものや。
けど有害なものは特にあらへんさかい安心し。
……一応言っとくけど、検査結果の操作も改ざんもしてへんで。
ほんまもんの結果やからな」
貴一さんはそう言い、グェントに笑いかけた。
涙が溢れてきて止まらない。
こんなこと………!
「ルリス君、牢の錠を開けてあげてください?
そして、落ち着いたら隊長室に来てください。鍵はその時受け取ります。
再契約するのでしたら同意書も…あと、ルリス君のお説教も致しますので」
「…!」
グェントの事しか頭になくて完全に忘れてしまっていた。
言われた後もしばらく思い出せなかったのだが
ここに来る前に、俺は看守を殴り倒して鍵を奪ったんだった。
あの人にも謝りに行かないと…
俺は涙を拭い、グェントの牢の鍵を開ける。
………鍵は開いたというのに、グェントが立ち上がる気配はない。
じっとその場に座り、隊長を見つめている。
「どうしました?」
「…どうして…隊長まで………」
隊長は軽く首を傾け、また笑みを浮かべた。
「ちゃんと鍵をかけてからお帰りくださいね」
「は、はいっ!」

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