「それがどうした」
「それがどうした じゃねーよ!」
我が親友、グェントに相談すると グェントはまるでぼくの話を聞いていなかったような返答。
思わずさっきのグェントの口真似をしてツッコミを入れてしまう。
「ぼくには彼女が居るんだーつっても諦めてくんねーんだよ!
ミシナも怒って口利いてくれないし!
しかもどこで調べたのかしんねーけど毎晩電話かかってくんだよ!」
「じゃあ一回くらいヤってやれば向こうも満足するだろ
減るもんじゃない」
「減るよ!確実に!ミシナからの信頼が!!」
何言ってんのこの人!!
グェントに相談したぼくが間違ってた。
ガキの頃から知ってるくせにどうして気付かなかったんだ。グェントに常識なんてものはない。
ガーッと叫ぶと、グェントは大きなため息をついた。
「俺、食堂行ってくる」
「ごめん」
ぼくがグェントとルリスの部屋に押しかけてしまったせいで ずっと居心地悪そうにしていたルリス。
さすがに耐えられなかったようで、立ち上がるとそそくさと部屋を出て行ってしまう。
「…………ホントどうしよう…
向こう芸能人だし、傷つけちゃ悪いだろ
…それに可愛いし……」
「だからだ」
「?」
「自分を良く見られたいから断れない。
俺なら相手が傷つこうが自殺しようが興味ないな。」
それもどうかと思う。










「ミシナ?」
食堂に来たルリスは 奥の席に座っているミシナに気付く。
「ルリス君…」
ルリスはミシナの正面の席に座り、黙ってミシナの様子を伺う。
じっと見つめられていて気まずくなってきたのか、ミシナはゆっくりと口を開いた。
「ルリス君は、アイドルのミシナの事どう思う?」
そんな質問に ルリスはニコッと笑う。
「キャサリンちゃんの飼い主なんだよね!」
「…キャサリン…?」
予想外の返答にミシナはがくっと体を傾けた。
「今人気の猫のモデルなんだけど 真っ白でふわふわで目がくりくりした赤目で可愛いんだー
たぶんミシナもCMとかポスターとかで見たことあると思うよ
………飼い主の方はよく知らないけど」
「そっか、うん。確かに見たことあるかも。
キャットフードのCMだったかな」
「そうそう!その時のキャサリンちゃんの後姿が……」
ルリスが話に食いついてきた時、突然外がざわめきだした。
出入り口に背を向けていたルリスは振り返り、首を傾げる。
「ん?」
「! あいつまた…っ」
「へ?」




「ちょっとあんた!」
「あら。メイクしてないから誰か分からなかった」
隊員たちからぼく、ポチの居場所を聞きだしたアイドルの方のミシナは 引きとめようとするミシナの声を無視しながら
大勢のファンを引き連れてグェントとルリスの部屋に来た。
そしてぼくはいきなり抱きつかれ…つか、一般人は寮に立ち入り禁止のはずだけど……
第一声目からの指摘にミシナは眉を寄せる。
…ぼくはミシナは化粧しててもしてなくてもそれほど差はないと思うけどな。
「それは貴様だろう」
自分のテリトリー内に続々と入ってくるヒトにグェントが苛立ち始めた。
アイドルミシナはグェントの言葉を聞くなりグルッとグェントの方に顔を向ける。
そしてそのドギツイ眼差しに圧倒されたのか、一瞬ビクッとなった。
「あなた…」
グェントはアイドル(というかミ・ミ以外の女?)にあまり興味がないのか
目の前に今乗りに乗っている美少女アイドルが居るというのに全く普段と様子が変わらない。
寧ろ機嫌が悪い。
「貴様がそいつに付きまとっている所為で俺が迷惑してるんだ
俺の邪魔をするなら今すぐ死ね」
「な…っ!なんて侮辱…!」
侮辱って言うか………(汗
「行こう、パティニャ君!
こんな最低な人、同じ空気を吸うだけでも嫌っ」
「……………それは言い過ぎいいいいい!?」
ぼくが話しかけた時、突然グェントが身を乗り出したかと思うと アイドルミシナの髪を掴み…!
「俺が怖いのか」
思いっきり見下した顔でグェントは彼女を睨みつける。
ぼくも怖いよ!機嫌悪すぎて!
「グェントやめろ!芸能人!しかも女の子だから!!」
ぼくはアイドルミシナの髪を掴むグェントの腕を引き剥がし、二人の間に立ちふさがる。
このままだと殴りかかりそうだ!
「ポーチー?」
暗く低い声に背筋がゾーッと冷たくなる。
ミシナ……!
「ご、ごめ……ギャーー!!」
「女の子…ねぇ」
ぼくがミシナに襲われている時、グェントは前髪をかき上げて呟いた。
その声に、アイドルミシナも再びビクリと震えた。



昨日はグェントの活躍(?)でアイドルミシナは諦めて帰ってくれた。
前回あの子の事で任務を失敗して、他の隊員に回ってしまったせいでしばらくぼくらにも、
グェントらにも仕事はないし、付きまとっていよう…と思う。
会議や大きい仕事がなければ貴一さんも大体本部内に居るから、貴一さんと…とも思ったが
貴一さんは笑って見ていそうな気がするからやめた。
朝目が覚め、寝そべったままぼやけた視界の中でベッド脇の眼鏡をかけ(いつもはコンタクト)、時計を見る。
「んー?」
11時半。8時に目覚ましをかけておいたはずなのに。
朝じゃねーじゃん
「おお!!?」
隣に寝ている女の子と、ぼくの腕に絡まっている金髪。
アイドルミシナ……!?
「ん……」

「ちょっとポチー いつまで寝ている気!?」
ドアがノックされる。ミシナの声……やばい!色々やばすぎる!
彼女を部屋に入れた記憶はない。服は着ている。
つか記憶が飛ぶほどの酒も飲んでいない!
「ちょっ、起きてる!起きてるから先行ってろ!!」
「は?」
慌てて彼女を跨いでベッドから飛び降り、何故か鍵が開いていたドアを少しだけ開く。
「……居るの?」
女の勘!!
スヴェルの力でドアを開けられ、ミシナが部屋の奥に入っていく。
「い、いや ぼくも今起きて気付いたところで…してないから!何もしてないから!!」
「何をするのよ馬鹿!」
腹を肘でどつかれてぼくがうずくまっている間に、ミシナはベッドの上に座っていたアイドルミシナの前に立つ。
「パティニャ君、大丈夫?」
ぎゃーー!!
ミシナに角はないが、角が見える!
今正面から見たら牙も生えてるんじゃないだろうか。
「パティニャ君の腕、力強くて優しくてミシナドキドキしちゃった!(寝相で)
眼鏡もかっこいいね!」
「何やったのクソ犬ーーー!!!」
「だから何もしてねーよ!!」
グェント化!?
「おーやっとる」
かすかに聞こえたその声に一斉に振り返る。
そこでは、全開のドアの影から貴一さんが覗いていた。見てるなら助けてくれ。
「隊員寮は一般人無断立ち入り禁止やで〜
入るときはちんと受付で手続きしてきなさい。それと今度自分トコの猫の足型ちょうだいや ダチが欲しがっとんねん」
「いや〜パティニャ君〜〜っ
キャサリンの足型くらいいくらでもあげるから放してーッッ!」
貴一さんは見つかって諦めたのか、そう言ってアイドルミシナを引っ張っていこうとするが
アイドルミシナはぼくの脚にしがみついて離れない。
キャサリン好きの貴一さんのダチ…ローリヤ地区のシレンツィオ副隊長だろうか。
「ちょっ…「離しなさい!あんたが悪いのでしょう!?」
「うるさいっ!胸だけ女!」
「むっ…!? あんたなんか胸すらないじゃない!」
「ムッカーー!!」
怖い。
「はいはい、こないなトコで喧嘩したら他の隊員に迷惑やろ〜」
どうしてこう毎日毎日、ぼくに付きまとえるのだろうか。
リゼンに来てから今までこんな経験はおろか女の子の方から告白された事も少ないってのに。
…つか、手続きしたら普通に来れるって教えたら次来た時から追い返すの難しいじゃん!
鍵かけてても入ってくるのに!
「ポチ、説明しなさい」
「…ぼくがして欲しいデス」
本当に。
この後やっぱりぼくは どこにいるか分からないグェントを広い施設内から探し出して
助けを求めるまでずっと付きまとわれていた。
ミシナとの仲も以前と比べて悪くなり…ぼく、何か悪い事してるのかな。
ああ、はっきり断れないからか。


<<前へ ■ 次へ>>