「和乃さま、もう帰っちゃうんですか?
外暗くなっちゃってるし、こっちに泊まっていってくださいよぉ」
フォ・コアはそう言って、ローリヤの本部を出ようとしていた和乃を引きとめようとする。
電灯に照らされてオレンジがかったコートの裾を掴まれた和乃は振り返ると
フォ・コアに向けてにこっと微笑んだ。
「すみません、フォ・コア
そうしたいのは山々なのですが、明日も朝から予定が入っていますので」
「うー…」
ここからリゼンの本部までは自動車と汽車を駆使しても7,8時間はかかる。
飛行船ならもう少し短い時間で済むが、飛行船は日のある間しか運航しない。
今は午後9時。
明日の始発に乗ってもうちらの予定の時刻には間に合わないだろう。
「じゃあ駅まで送らせてくださいっ
いいよね!シレンツィオ!隊長命令っ!」
フォ・コアはぐるっとシレンツィオの方を向き、問いかけ(?)た。
後ろでボーっと立っていたシレンツィオは突然振られた話に戸惑って返事ができずにいる。
何でこの程度の話でサッと返事ができないんだ。イライラする
「あっ…」
「いいよね?フォ・コアはもう仕事ないもんね?」
………………。
頭脳は大人でも、思考はやはり子供だ。
こうなったら何が何でもついてくるぞ。
「わ…わた……「あんたもついて来よったらァ?
わてら出たあとフォ・コアと運転手だけ帰すん危ないやろ」
言いたい事は分かるんだが、いつまでも口ごもって言えずにいる可哀想で腹立つ兎に助け舟。
先に自動車に乗って待っていたわては少し声を張って伝える。
ローリヤ地区の本来のスウィーパー隊長は今病を患って入院中。
治療の目処は立っているものの、まだもうしばらく復帰する事は出来ないからと
娘のフォ・コアが隊長代理としてその席を守っている。
代理とはいえ隊長。
スウィーパーに恨みを持っている者がいつ襲撃してくるか分からないし
二国のスウィーパーの隊長が同時に移動してるとなるとその危険性だって高くなる。
しかもフォ・コアはたった12歳の人間の少女だ。
運転手も隊員とはいえ、自分を守るすべすら持っていない子供を守りながら戦うほどの力は持っていない。
「…そうしましょうか」
和乃の言葉にフォ・コアは唇を尖らせつつ、はーい、と素直に応じた。



「………」
普段より二人多く乗る事になり、わては助手席に移動、
後部座席にフォ・コアを挟んで和乃とシレンツィオが座った。
和乃とフォ・コアは雑談、わてはうたた寝、運転手はシレンツィオと同じタイプの無口な男。
シレンツィオは暇そうに窓の外の建物の流れを眺めていた。


「ぐおっ!」
突然ブレーキがかかり、完全に眠りに落ちていたわては飛び起きる。
腹に食い込んだシートベルトを緩め、周囲を見渡すと 後部座席に居た3人が身構えている。
そして
「手配No.Row-D-4769、4770、4810…E-………」
車両の周りには大勢のスヴェルの方々☆
長距離の移動と仕事で疲れてんだからあんまり働かせんなよ…
シレンツィオはジリジリと間合いを詰めてくるスヴェルらを一人ずつ確認していく。
シレンツィオの様子からしてほぼ全員手配中の方々、ってか。
最高Dクラスって事は殺人まではやってないって事だけど
「合計17体 うち12体が手配中。視覚外に潜伏している可能性もある
戦力は私と貴一で足る フォ・コアとリゼン地区隊長は共に車両で退避すべき」
「わーっとるわ」
いくら戦場に対応できるように強度が高めてあったって車は車。
こちらから攻撃できない上 攻撃されれば壊れるし、爆発でもすりゃあまとめて一発だ。
移動手段を失わないためにも車は退避させた方がいい。
もし追っ手が行っても、和乃と運転手で対処できるだろう。
「いち、にの、さんでいくで」
「ドライバーも同時にアクセルを踏むように」
「はい!」
わてとシレンツィオはそれぞれシートベルトを外し、和乃はフォ・コアを庇うために抱き寄せる。
ドアに手をかけた。
『フォ・コアっ!』
「!」
傾いたシレンツィオの帽子から悪趣味な兎のぬいぐるみが飛び出してくる。
名はキャシー。
戦えないフォ・コアの守護のためにシレンツィオが作り出した操り人形だ。
今は隊長、副隊長格が3人。
それと比べると役に立つかは分からないが、敵に集中できる分心強い

「いち にの










車両から飛び出すと同時に術符から鎌を召喚
激しいエンジン音を響かせて自動車が勢いよく発車する。
正面に立っていたスヴェルどもは間一髪のところで回避。
…一応動けるみたいだな
近辺にいた4体のスヴェルが車両を追おうとする
「隔離」
術符を発動、符を中心にドーム状に広がった結界にその4体が激突する。
「行かさへんで」
体勢を立て直してこっちを振り返った奴らに笑ってみせる。
「ローリヤ地区スウィーパー隊副隊長 白兎のシレンツィオ
貴公等の目的は」
お互いに背中を合わせて周囲に警戒する。
目的…って、この状況でイタズラでした!とかファンなんです!サインください!なんて言う訳がないんだから 一々
聞かなくても。
「そんなん…決まってんだろ」
わてらを囲っていた一人が呟く。
攻撃型スヴェル特有の属性武器を召喚し、顔の前で構えた。



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