氷室和乃
独特の文化を持つ島国、倭国にて 大陸人の父と倭国人の母との間に長男として生まれる。
生まれつき体が弱く、兄弟もいなかった事で過保護に育てられ、
初めて屋敷の外に出たのは二十歳を過ぎた頃だった。
それから数年し、父への憧れから倭地区スウィーパー隊に入隊するが

自らの過ちで 父を殺した。




生前、父は大陸のリゼン地区スウィーパー隊を束ねる隊長だった。
しかし父は人の上に立つような威厳や風格があったわけでもなく
まともな性格の持ち主だったとすらとても言えなかった。
それでも、誰もに信頼され、慕われていた。
私もそんな父を誰よりも尊敬していた。
大陸の言葉で表現すれば、カリスマ性と言うのだろうか。

「和乃」
大陸人の訛りが強く入った声で私の名が呼ばれる。
声の主はリゼン地区スウィーパー隊の現副隊長で、父の生前のパートナーであった銀狐のスヴェルの貴一。
和国の屋敷でも数度会った事がある。
貴一は部屋の入り口から隊長の席に座る私を見据えた後、重い足取りで私の前まで寄った。
手に持っていた紙の束を私の前に置く。
「除隊届」
「…そうですか」
もう何度目だろう。
前隊長の父が死亡したすぐ後、貴一と倭地区スウィーパー隊隊長とで連絡を取り合い
次の隊長が決定するまでの間、息子の私がその任を担うように伝えられた。
何故その時私が選ばれたのか、私にはまだ分からない。
こうなってしまう事は分かりきっていたのに
このままでは 父が守り続けてきたこの隊が…
「和乃」
再び名前が呼ばれる。
「リゼンを失望させるな」
「………」
ああ、そうだ
私が背負っているものは罪とこの隊だけではない。
スウィーパー隊が破綻すれば、国そのものにも多大な影響が出る。
国だけでなく、全世界にも
私に託されたんだ。
私がやらなければ

終わらせない。