それから2年。
来る日も来る日も勉強を続け ようやくそれが実を結んだ。
ダチにも両親にも黙ってスウィーパーの免許を所得。
そして、俺は皆の反対を押し切って家を飛び出し 再びリゼンに来た。


「入隊を受け付けてない!?」
「ご希望されている駆除班は現在欠員が出ていませんので…」
やっとリゼンのスウィーパーの本部まで来たってのに…
思えばそうだ。当たり前じゃないか
今は6月。4月に入隊式があったばかりだ!
「何もめてんの?」
「!」
脱力して受け付けのカウンターの前にしゃがみ込んでいると、そこに聞き覚えのある声が…
「あっ!お前!!」
「ん?」
「副隊長 …入隊希望者です」
「副隊長ォォ!?」
あの時の銀狐…!
隊長だけじゃなくて副隊長まで若いのかよ!!
「………」
思わず立ち上がると 副隊長はジーッと俺の顔を見つめてくる。
な、何だ…?
「……会った事あるよなァ?」
「え、あ…っ 俺 2年前に…!」
「あ、テロの被害者!」
真剣な表情が突然笑顔に変わる。
覚えてた…!
「わて記憶力はええねん
こーんな目つきしてずーっと和乃の事睨んどったよな」
副隊長は自分の目元を指で吊り上げて言う。
…俺の目はそんなに吊り上ってない。
「俺 あの時マジですげェって思って!
ヒムロ…隊長の隊に入りたくて やっと免許とったんスよ!
んで昨日ローリヤから出てきて…」
「んん、そうかそうか。
…あれで凄いて思うくらいやったらおウチ帰りな」
「えっ…」
「2年目の素人に憧れるような奴が生き残れるわけあらへん
それに 職業や人に惚れて入った奴はみな途中で折れるか死んどるわ」
冷たい目……
さっきまでの顔とは全然違う…怖い…!
「そんな…」
「人殺せるん?」
…!
「憧れで人殺しになれるんか?
仲間や恋人がどんどん減っていくのに耐えられるんか?
見ず知らずの他人の為に死ねんのか?」
「…………」
崖から突き落とされたような気分だ。
考えた事もなかった。
ただ ヒムロの隊に入りたいって…ヒムロみたいになりたいって……
「新人の死因の半分は自殺やで」




スウィーパー本部 正門横の塀に凭れてしゃがみ込んでいると
真新しい黒塗りの高級車が敷地内に入っていく。
「…残酷」
せっかく免許まで取ったのに。
2年間、大ッ嫌いだった勉強しかしてこなかったのに。
泣けてくる
「どうしました?」
横から声が。
顔を上げると 白いコートに淡い茶色の髪 女のような顔…ヒムロだ……
びっくりした
さっきの車に乗ってたのか?
「中にどうぞ お聞きしますよ」
「…いいっす
もう諦めるんで」
ヒムロは俺の隣に座り、逸らした俺の顔を覗き込む。
コート、真っ白なのに汚れないかな
「何を…どうして?」
「……副隊長さんに言われたんス
憧れで人が殺せるのか 仲間が死ぬのに耐えられるのか 他人の為に死ねるのか って
……死にたくないし 死なせたくないです
ただ俺、あなたみたいになりたい…って…」
「………」
膝に顔を埋めると ヒムロは塀に凭れかかり、空を見上げた。



「そう思うのは、人として当然です
相手が仲間であろうと犯罪者であろうと 人の死に無感な者は我が隊に必要ありません」
「……」
「それを悔い、耐え忍び、支えあう為にパートナーや隊が存在するのです。
――私も この隊や貴一が居なければ今を生きていなかった」
「…貴一?」
「副隊長です
彼は10年間 この隊を副隊長という立場から見てきたのですよ」
10年…
見た感じ26,7歳って所だったけど…そんな頃から?
「あなたに酷い言い方をしたのもきっと、あなたを思うあまりの事だったのでしょう
彼は肝心な所で不器用な人ですから」
「あの」
「はい」
俺に笑顔を向け、立ち上がったヒムロに声をかける。
何か…解された気がする。
「あなたは、どうしてスウィーパーになったんですか?」

「…父に憧れて、ですよ」




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