「(暇すぎる…メアリー何やってんのかな…)」
俺以外の3人で何か(多分スヴェルの術や氣の残留濃度とか?)を
計測しては一定距離移動し、また計測…をただ淡々と繰り返すだけ。
たまにヘビとかネズミみたいな動物に遭遇してビビる以外ホント何もない。
「はい、持って」
「はい」
イツハさんに指示された荷物を肩に担ぐ。
重い…4人分の必要最低限の食料と水、医療器具等の入ったリュックを背負って
機関銃の入ったトランクを持って山道を歩くってだけでも結構大変なのに
それにさっき渡された計測器具まで加わると…
…まあイツハさんは女性だし、大柄なウォーキーさんも俺以上に物持ってて、
万事に備えて一人は身軽でいなきゃならないって事でリドさんは軽装。
ついてきても役に立たねぇ俺が荷物持ちになるのも当たり前か。
「あれ」
「ん?」
移動の最中、立ち止まった俺に気付いたリドさんが振り返る。
「何かニオイしません?何か…何だろ」
どう表現していいのか分からないにおいがうっすらと。
「俺今鼻詰まってて分かんねー」
「……血、かな」
あとの二人に判断を委ねたリドさんの代わりにウォーキーさんが答える。
「今この山は封鎖されてるんだから動物だろう
狼多いしな…って」
ウォーキーさんの最初の回答を聞いて 俺は機関銃のトランクだけを持ってニオイのする方向へ向かう
「こらオルガヌ!単独行動をするな!」
勝手に行動に出た俺の後をリドさんが追ってくる。
何か変な感じがする
コレ …いや…何だろう
とにかく変な感じ

うっそうと生い茂った雑草に足を取られつつ 自分の鼻を頼りに進む。
「…?」
ニオイが消えた。
立ち止まると、俺を追ってきていたリドさんが俺の腕を掴み、引き戻そうとする。
「勝手な行動をするな!」
「いや けど………家?」
木々の間から見える古ぼけた山小屋が目に入る。
山小屋…っていうには少し大きい。小さな家。
指を指してリドさんの反応を見る。
「は?」
俺の示した先を身を乗り出して確認するリドさん…だが、微妙な反応。
「お前目どうなってんの?」
「え…普通っすよ!リドさん背ェ低くて見えてないんじゃないすか!」
「馬鹿にすんな!」
怒られた…
「何喧嘩してんのよ」
イツハさんとウォーキーさんが近づいてくる。
あああ…俺がほっぽり出した荷物、全部ウォーキーさんが…
「向こうに家があるんスよ そんな記録ありました?」
「家? ないはずだけど」
「だろぉ?」
「ええ…」
イツハさんもリドさんと同じ反応。
「…冗談はいい加減にしろ
何かに気付いたらすぐ調べる 仕事だろ」
ウォーキーさんが呆れたように言う。
冗談だったのか!
ウォーキーさんに注意され、リドさんはへへ、と笑って再度俺が指差していた方向を見る。
「何でオルガヌには見えてんのかは帰ってから調べるとして
まずは計測器具が置ける場所まで戻る、はい」
リドさんに背中をどんと押されて来た道を戻る。
草だらけで安定しない場所には置けないしな
「…え?」
突然後ろから腕を引かれ、振り返る。
リドさんかと思いきや、相手の目線は俺より上。
顔を見上げると、驚くほど綺麗な顔をした男が―――…



「誰…?」
「何故気付いた」
「! オルガヌ!離れろ!」
「えっ…うわあっ!?」
3人が一斉にこっちに武器を向ける。
それが見えた瞬間リドさんが発砲し、俺と男の目の前を銃弾が掠める。
僅かに男の手の力が緩み、腕を振り払って間合いを開く
俺の前にリドさんが立ち、まだ銃口から煙がのぼる銃を男に向けた。
「…スウィーパーか」
目の前で発砲されたっていうのに男は冷静なまま、囁くように言った。
青い髪に金色の目と 長い耳…って
………こいつが 悪魔…?
「うわっ!」
「キャアッ!」
男がす、と左手を上げると人差し指の先に小さな紋章陣が発生
次の瞬間リドさんとイツハさんの銃の銃身が爆発した。
「イツハ!オルガヌを連れて逃げろ!」
リドさんはそう言うと 使い物にならなくなった銃を捨て、腰に備えていた剣を抜く
「そんな…っ「行くわよ!」
意見する暇もなくイツハさんに腕を引かれる。
銃の爆発で傷ついたイツハさんの手からは血が流れ、俺の服に染みる。
「二人は…!」
「負傷者と素人は邪魔にしかならな………」
「………ぇ」
耳元で風のような音が聞こえたのと同時にイツハさんの言葉が途切れる。
「う、、ぎゃああああああああああ!!!」
「!!」
イツハさんのプラチナブロンドの長髪が切り落とされ 傾いた首が地面に落ちる
物凄い勢いで血が噴き出し、俺は何かを思うより先に悲鳴を上げた。
「叫ぶ暇があったら早く行け!」
ウォーキーさんに思い切り突き飛ばされ、倒れたイツハさんの体にけつまずいて転倒する。
目の前にイツハさんの顔が…

…何だよ

何だよ!何だよ!!何なんだよ!!!

「…! リド伏せろ!」
「!」
トランクのケースを開け 悪魔に向けて機関銃を構える
俺が引き金を引く寸前に前に居た二人が体勢を低くし 弾道を避けた
「あ、あああああッ、ああああああッッ!!!」
俺の銃からの煙と土煙が辺りに立ち込める。
「もういい! オルガヌやめろ!」
「うわッ!」
煙の中からうっすらと紋章陣の明かりが見え 俺の銃が爆発。
その勢いに横に吹き飛ばされる
「オルガヌ…!」
倒れた俺にリドさんが駆け寄り、俺の肩を揺する
「う…」
俺は何をやってるんだ
ただの短期の調査で ちょっと調べて帰ってくるだけのはずだったのに
イツハさんが
俺が勝手なことをしたから
俺のせいで
俺のせいで 俺は… 俺が 俺は 俺は 俺は…!!









    ――― に  怒られるかな――――――…









「どうした?」
ふいに振り返ったメアリーに気付き、同行していたゼンさんが問いかける。
「いえ…オルガヌ君、大丈夫かなって思って」
「…気になる?」
ゼンさんに珍しく真顔で問われ、メアリーはかあっと顔を赤くした。
「違います!そんなんじゃないです!」
「いやー俺はただ同じ訓練生としてオルガヌが心配なの?って聞いただけなんだけど」
「ちゃかさないでくださいー!」
メアリーはにやにやと笑って言うゼンさんの腕を叩いて後ろを向かせ 背中を押して次の聞き込みに向かった。









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